JR埼京線、山手線、湘南新宿ラインが23日夜、停電で約3時間半にわたって運休し、約26万人に影響したトラブルは、目白駅(東京都豊島区)の駅舎天井部分に設置された高速無線通信用ケーブルの落下防止策が不十分で、通過した埼京線列車が切断した可能性が高いことが、JR東日本への取材で分かった。国土交通省関東運輸局は24日午後、JR東から事情を聴く。
JR東によると、23日午後7時18分ごろ、目白駅を通過する埼京線下り普通列車の運転士から「何かが落ちてきて運転台の窓ガラスに当たった」との報告を受けたのとほぼ同時に、同線と湘南新宿ラインの新宿―池袋間が停電。隣接して走る山手線も非常無線が鳴ったため、手動で電気の供給を止めて運行を停止した。
その後の同社や警視庁目白署の調べで、埼京線下りと並行して走る山手線内回りの架線に、銅製のケーブル(長さ約50メートル、直径約1.5センチ)が絡みついているのを発見。停電は、架線とケーブルのショートが原因と判明した。
目白駅でのケーブル落下防止策として、同社は当初、「金具で固定している」と説明していたが、プラスチック製留め具だったことが判明。この留め具は1~2メートルごとに二重に取りつけていたものの、固定不足で緩み、ケーブルを埼京線下り列車が切った可能性が高いという。
ケーブルは同社が「駅でもモバイル」を宣伝文句に普及を進める高速無線通信サービス「WiMAX(ワイマックス)」用で、目白駅では駅舎天井部分に昨年2月に設置。無線設備とアンテナを線路を横断する形で結んでいた。
現在サービスが行われている111駅のうち、目白駅を含む4駅以外は屋内に設置されており、架線と接触することはない。また、目白駅では、他の3駅では講じられていた落下防止管などの二重の対策がなかったという。
全線復旧まで約3時間半と長びいたことについて、同社は「列車から乗客を降ろすための安全確保に時間がかかった」と説明。通常は線路づたいに乗客を歩かせることはしないが、列車が運行不能になったため、降車を決断したという。だが、同列車の乗客数について当初、実際の3分の1以下の約400人と推定する不手際もあり、降車に約1時間かかった。
また、池袋駅などでは構内放送で「線路に物が投げ込まれた」と乗客に誤った説明をし、混乱を増幅させた。
同社は「当社の設備が重大な輸送障害を起こし、乗客の皆様に深くおわびするとともに、再発防止に全力を挙げる」としている。(小林誠一)