10月24日14時0分配信 WIRED VISION
イスラエルのレホボトにあるワイツマン科学研究所の研究チームが、培養したニューロン(神経細胞)を使って計算回路を作り出す方法を開発した。
研究チームは、ガラス板の上で神経を培養し、その結合箇所と活動を制御することによって、脳細胞回路の構成要素となるANDゲートとダイオードを作成した。
このプロセスは次のようなものだ。細胞を寄せ付けない物質でコーティングしたガラス板の表面に回路パターンを彫り、[細胞の働きを阻害しないような]接着剤を使って結合する。こうすることで、細胞はプレート表面に彫られた細い筋の中でしか成長できなくなる。この筋は非常に幅が狭いので、神経細胞は一定方向にしか伸びられないという仕組みだ。
その結果、電子回路内の配線のような結合部が形成され、2つの入力があると1つの出力を生成するANDゲートの作成が可能になる。さらに、少量の薬品でニューロンを刺激すると、信号が送信されて回路が完成する。
[『New Scientist Tech』の記事には実物の画像がある。1辺の長さは約900マイクロメーター]。
この研究は神経回路の分野における1つの進歩だが、「コンピューターと神経系の橋渡し」として機能する、脳細胞論理回路の開発に役立つ可能性があると専門家は指摘している。
『Nature Physics』紙に発表された同研究チームの論文要旨には、「機能的な超小型論理回路は、脳内の計算能力に関する最も重要な構成要素だ。しかし、単一のニューロン結合だけでは信頼性がなく、高速な応答再現性を獲得するにあたって、ニューロン集合がどのような構成をとるのかはまだ明らかになっていない」とある。
単一のニューロンの信頼性は40%にすぎないとされる。これに対し、今回神経回路を作成した研究者らは約95%の信頼性を獲得することに成功した。[『New Scientist Tech』の記事によると、単一のニューロンの伝送効率は悪いが、脳ではニューロンを大量に結合させることでより高い信頼性を獲得している。研究者はニューロン集合をANDゲートとして構造化することで、信頼性を約95%まで高めることに成功した。コンピューターと神経系をつなぐ場合、信頼性のない神経細胞は問題になるが、今回の研究はその橋渡しになる可能性があるという]
『New Scientist Tech』の記事「脳細胞からコンピューター回路を作成」を参考にした。
[過去記事「神経細胞を「人工の記憶装置」に」では、イスラエル、テルアビブ大学で行なわれている、培養した神経細胞に化学的な刺激物を注入することにより「人工の記憶装置」を作成する研究について紹介している]