桐生市新里町鶴ケ谷で9日未明に起きた住宅火災で、子どもを含む3人の命が奪われた。12月27日早朝には伊勢崎市東町の火災でも3人が亡くなるなど、県内で火災による惨事が相次いでいる。
出火したのは9日午前2時20分ごろ。自動車修理販売業瀬谷光司さん(59)方の木造平屋建て住宅約150平方メートルが全焼した。光司さんの妻美和子さん(60)は搬送先の病院で死亡が確認され、焼け跡からは男性と子どもの遺体も見つかった。大間々署は、遺体は光司さんと、遊びに来ていた孫娘の高田朱莉(あか・り)ちゃん(6)とみて身元確認を急いでいる。
同署の調べでは、家の中央部にある台所付近の燃え方が激しいという。現場は、わたらせ渓谷鉄道大間々駅から西へ約2・5キロの農村地帯。
瀬谷光司さんの甥(おい)で、近くに住む瀬谷直樹さん(29)は、ガラスの破裂音などで火災に気づいた。すぐに家を飛び出し、他の親族と一緒に燃え上がる光司さん方の玄関をたたいて名前を呼んだが、返事はなかった。裏手に回り、物干し竿(ざお)で窓を割って回ったが、火の勢いが強く、離れて見ているしかなかった。
近所の住人は、数メートルの火柱が上がり、光司さん方が炎に包まれるのを見た。近くに住む朱莉ちゃんの母親が燃えさかる住宅の前で「朱莉を助けて」と泣き叫んでいた。
突然の悲劇に、朱莉ちゃんの父親は「今は何も言えない」とショックを隠しきれない様子だった。
隣に住む青木五五(いつ・い)さん(52)は「瀬谷さんは息子が自動車工場を継いでくれると言って喜んでいた。工場を1年前ぐらいに建て替えたばかりだったのに」と話した。
朱莉ちゃんは、母親の実家で近所の光司さん宅にひんぱんに遊びに来ていた。光司さん、美和子さん夫妻と仲良く3人で散歩をしたり、庭で遊んだりしていた。「4月には小学校に入るから、ランドセルを買ってあげなきゃ」。美和子さんは出火前日の8日、整備工場を訪れた客にそんな話をしていた。
朱莉ちゃんが通う城山幼稚園(桐生市新里町山上)では、担任教諭の福島幸枝さん(38)が「また火曜日に会えると思っていたのに。間違いであってほしい」と涙をぬぐった。
8日の始業式後、園児らが冬休みの思い出を絵にした。朱莉ちゃんは、クリスマスツリーの両脇に自分と幼い妹を描き、連休明けに続きを描こうと話していた。大きく残った余白。福島さんは「きっと両親や祖父母を描くつもりだったと思う」。