英国最古の美術館が再オープン

約6100万ポンド(約91億4450万円)をかけて修復が行われていた英国最古のオックスフォード大学アシュモリアン美術館が、11月7日に再オープンした。世界最大規模のラファエル前派の絵画コレクションに加え、同大出身で「アラビアのロレンス」として知られる英軍人のT・E・ロレンスが、アラブ反乱の任務中にまとっていたローブなども目玉として展示されている。
 326年の歴史を持つ美術館を現代風によみがえらせたのは米国生まれの建築家リック・マザー氏。10カ月にわたる工事を経て展示スペースは2倍に広がった。以前は作家の作風・出生国別に展示されていたが、修復を機に、文化交流に重点を置いた展示方法に改められた。
 クリストファー・ブラウン館長は「今まで以上に多くの作品を、より適切な方法で紹介できる」と満足げだ。
 アシュモリアン美術の開館は1683年。英政治家で収集家のエリアス・アシュモール(1617~92年)の寄贈コレクションを展示するために造られた。1845年、英建築家チャールズ・コッカレルの設計によってネオクラシック様式の建物へと改築。神殿を思わせる屋根付きの入り口から左右に棟が伸びる建物だ。その後、展示スペースを広げるため増築が行われたが、今回マザー氏はその部分を違和感なくつながるような形にデザインし直した。
 「デザイン上のコンセプトはとてもシンプル。増築の余地のない場所にスペースを拡張することだった」というマザー氏。「単なる模倣ではコッカレルに対して失礼になるし、つまらないものになってしまう」ため、オリジナルに新しいものを付け加えることを決めたという。
 今回の増築部分は中央のアトリウムとその周辺に配置された6つの展示室。各展示室は橋で結ばれている。壁面はガラス枠を採用しているため自然光が差し込み、別の展示室の様子も眺めることも可能だ。美術館が意図する文化交流を実感できる。
 エリアス・アシュモールは当時美術館を評して「1日で世界中を見てまわることができる」と語ったが、今日の訪問客も同じ感想を抱くだろう。古代ギリシャ・ローマ時代から始まり、世界各地の美術品をめぐって最後は19世紀英国のラファエル前派にたどり着く。
 改修前の年間来場者数は約40万人だったが、ブラウン館長は「それ以上の来場を期待している」と語った。

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