社説:もんじゅ再開 実用化への道は未知数

日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」が運転を再開した。95年のナトリウム漏れ事故から実に14年5カ月ぶりとなる。

 長期にわたり停止していた機器を動かすだけに、安全性の確保には細心の注意が欠かせない。原子力機構は当然、念入りな点検を実施してきたはずだが、念には念を入れ、慎重に作業してほしい。

 長期停止設備も含め、トラブルはありうる。その際に忘れてはならないのは、情報の透明性だ。

 95年の事故の際、原子力機構の前身である旧動力炉・核燃料開発事業団は、情報隠しを行った。それが組織の信頼性を著しく損ね、施設への不信感にもつながった。再び同じことがあれば、信頼は取り戻せない。

 日本政府は、使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを再び燃やす「核燃料サイクル」を原子力政策の要としている。高速増殖炉は、この政策を支える車の両輪のひとつだが、運転再開に伴う短期的な安全性以外にも、課題は山積している。

 今回の運転再開は試運転に相当する性能試験で、すぐに発電するわけではない。1年後に予定される発電開始や、3年後の本格運転開始までには、多くのハードルを越えなくてはならない。

 これがうまくいったとしても、高速増殖炉の実用化はまだ遠い。もんじゅは、「原型炉」の段階であり、「実証炉」を経て50年までに商業化するという。しかし、もんじゅの運転が遅れたため、すでに検討が始まっている実証炉にその経験が生かしきれるのか不明な部分がある。どれほどコストがかさむかも未知数だ。

 実用化には経済性も欠かせない。もんじゅの建設・運転費はこれまでに約9000億円、今後の運転に毎年約200億円かかることを思うと、楽観できない。

 高速増殖炉の世界的な位置づけも変化してきた。米国やフランスは、核廃棄物を燃やして減量する手段として、もんじゅの技術に注目する。そうした動向も踏まえ高速炉の将来を考える必要があるだろう。

 核燃料サイクルにはもうひとつの課題がある。高速増殖炉と共に政策の両輪を成す再処理工場でもトラブルが相次ぎ、完成時期がたびたび延期されてきたことだ。特に、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体作りの過程が難航。今も、溶融炉に落下したレンガの回収に手間取り、完成のめどが立たない。

 温暖化対策の影響で、このところ原発には追い風が吹いている。しかし、高速増殖炉は通常の軽水炉とは位置づけが異なる。安全性もコストも、今後の見極めが肝心だ。

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