興福寺(奈良市)の南大門跡を調査中の奈良文化財研究所と同寺は10日、銅銭やガラス玉を納めた須恵器のつぼが見つかったと発表した。建設の際に地鎮のため埋められたとみられる。古代寺院では金堂など中心施設の建設時に埋めた地鎮具は多く見つかっているが、門跡では初めてという。
同研究所は「興福寺は当時の権力者、藤原氏の氏寺。丁寧な地鎮の様子から権勢の大きさがうかがえる」としている。
つぼは直径18.7センチ、高さ15.5センチで、内部に土が詰まっていた。エックス線撮影などで調べたところ和同開珎5枚や、直径約6ミリ、厚さ約3ミリの楕円(だえん)形のガラス玉13個が納めてあることが分かった。
つぼが出土したのは南大門跡の基壇(土台)のほぼ中心軸上。周辺で出土した瓦などの年代から、8世紀前半に埋納されたとみられる。門は火災などによる喪失と再建を繰り返し、現在は残っていない。(10日 20:57)