美濃焼の上薬原料「長石」の鉱山跡発見…岐阜

志野や織部、黄瀬戸など美濃焼を代表する上薬の原料とみられる長石の鉱山跡が、岐阜県土岐市土岐津町土岐口の山中で見つかった。

 発見した同県多治見市市之倉町の陶芸家高木典利さん(61)は「良質な長石が身近にあったからこそ、美濃焼の一大産地になりえたのだろう」と話している。

 県陶磁資料館専門委員を務めている高木さんは、約30年前、美濃焼のルーツに興味を持った。作陶の傍ら、戦前の古文書をたよりに美濃焼が盛んな東濃地区などの山中約15か所を巡っていて、鉱山跡を見つけた。

 鉱山跡は東西約50メートル、南北約20メートルで、内部の天井の高さは約20メートルあった。入り口周辺には、長石の特徴であるガラスのような塊が露出している。地下内部の表面には所々、金具で削った跡が残っていた。

 高木さんは、「当時の陶工たちは採掘した長石を持ち帰り、石臼できめ細かな粉末にして器の表面に施して焼成、純度の高い透明感のある上薬にしたのだろう」と思いを巡らす。

 化学分析をした結果、16世紀後半、同県可児市久々利などの古窯から出土する志野や織部などの陶片に含まれる上薬の成分と同じ、純度が高いカリ長石と分かった。「上薬の良しあしで出来栄えが左右されるため、美濃焼に欠かせない長石の調達場所であったはず」と、高木さんは推測している。

 同鉱山は、明治初期まで掘削されていたらしい。現在、土岐市土岐口財産区が管理している。高木さんは「美濃焼の源流を知る場所としてこのまま残して欲しい」と話している。(市来哲郎)

(2010年4月12日09時53分 読売新聞)

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