日仏自治体交流会議 4テーマ取り組み

◆文化、経済、環境、社会◆

 「第2回日仏自治体交流会議」が12日、金沢市広坂1丁目の金沢21世紀美術館で開会した。初日は全体会議の後、会場を移して「文化」「経済」「環境」「社会」の4テーマごとに分科会があり、参加者が各地域ごとの取り組みなどについて発表した。

 午前9時半から始まった全体会議では、山出保・金沢市長が「日仏の様々な課題について解決策を探る機会にしたい」とあいさつ。門川大作・京都市長が「ものづくり都市・京都市」と題して、同市の地域経済の活性化の施策などについて発表した。また、パリ市のクリスチャン・ソテール助役は「パリ市における気候変動対策の計画」と題し、市が独自に取り組む温室効果ガス削減について報告した。

 午後からは分科会が開かれ、「文化」をテーマにした会合には日本から金沢市や神戸市、新潟市など8自治体、フランスからはナンシー市やマルセイユ市など5自治体が参加した。金沢市の森源二副市長がガラスと九谷焼を使った新しい工芸品について発表。
群馬県富岡市の岡野光利市長は富岡製糸場の建設にフランス人技術者が招請されたことが縁で生まれた交流の歴史について紹介した。

 最終日の13日は同美術館で分科会の内容が報告され、共同宣言が採択される。

被爆者すべて救済を

■第2次和解 韓国人原告「手帳前提」批判

 海外に住んでいるというだけで、日本の被爆者援護から対象外とされてきた韓国人被爆者たち。国家賠償を求めて長崎地裁に提訴した韓国人856人のうち、第2次原告の299人について11日、国との和解が成立した。「私はかつて日本人だった」と話す

 原告の許萬貞(ホ・マンジョン)さん(77)=韓国・釜山市=は、特別な思いでこの日を迎えた。(枝松佑樹)

 11日午後、和解協議を終えた弁護団が地裁から出てくると、支援者が「和解成立」と書いた紙を掲げた。許さんは何度も深々と頭を下げ「残りの原告も和解を成立させ、私たちに希望を持たせて下さい」とあいさつした。

 父が強制徴用で来日し、許さんは神戸市で生まれた。1945年2月に広島市に引っ越し8月6日、12歳の時、爆心地から約2キロの自宅で被爆した。熱線こそ浴びなかったが、飛んできたガラス片が耳や背中一面に刺さった。

 近くの川で遊んでいた弟(当時9歳)は全身にやけどを負い、1週間後に亡くなった。「私は家の掃除をしていて助かった。弟にも手伝わせておけばよかった」と今でも悔いている。父も重いやけどを負い、おじは幼い子2人を残して被爆死した。

 家族で同年11月ごろに帰国したが、同じ韓国人から「何で帰ってきた」「日本に行かなければ被爆しなかったろう」と差別を受けた。仕事がなく、一時は松の木の皮を食べて飢えをしのいだ。「強制徴用されたのに理解してもらえなかった。原爆で家族はめちゃくちゃにされたんです」

 許さんは日本の教育を受け、日本語しか話せなかった。なのに、日本に住む被爆者と同じ援護を受けられず納得できなかった。韓国人被爆者の仲間の中には、最初から援護をあきらめ、被爆者健康手帳は「紙くず同然だ」と取得の申請すらせずに死んだ者がたくさんいるという。

 国は、訴訟で受給資格が確認できれば和解に応じる方針だが、それは事実上、手帳の取得が前提となっている。「私たちのように手帳を持つ者だけでなく、すべての被爆者に救済の手を差し伸べてほしい」。許さんは、韓国原爆被害者協会の副会長も務める。仲間たちのため、これからも闘い続けるつもりだ。

消防士ら 就業前にアルコール検査/熱海市

熱海市の消防士が酔って器物損壊事件を起こしたことを受け、同市消防本部は11日から、就業前のアルコール検査を始める。アルコール検知器を3台導入し、消防車と救急車の乗務員55人を対象に、午前8時半の就業前に検査する。少しでも反応すれば就業させない。

 消防士は4月17日夜、歓迎会の帰りに交番の掲示板のガラス2枚を割ったとして熱海署に器物損壊の疑いで現行犯逮捕された。地検沼津支部は処分保留で釈放したが、消防本部が本人から事情を聴いたところ、深酔いして意識がなかったと話しているという。

 消防本部は「就業後や非番も出動に備えているべきで、公務への自覚が足りなかった」と判断。今後はアルコール検査に加え、「日本酒は1合まで」などとする酒の飲み方マニュアルもすべての消防本部職員に配る。

三鷹市でコントラバスなど盗難 5千万相当、演奏家宅から

東京都三鷹市下連雀の演奏家の男性(57)宅で今月、コントラバス5台など計約5300万円相当の楽器が盗まれていたことが10日、警視庁三鷹署への取材で分かった。同署は窃盗容疑で捜査している。

 同署によると、盗まれたのは、ほかに演奏用の弓19本や運搬用のケース。いずれもイタリアなど外国製で、男性は自宅で販売用に保管していた。1台約1千万円相当のコントラバスも含まれている。

 男性は1日から家族と旅行に出ていた。4日午後3時ごろに帰宅した際、1階窓ガラスが割られ、2階の部屋に置いていた楽器が盗まれているのに気付いた。

 高価な楽器ばかりが盗まれており、三鷹署は専門知識を持つ者の犯行とみている。

高松塚壁画を一般公開 奈良・明日香村で5回目

奈良県明日香村の高松塚古墳(7世紀末~8世紀初め)の国宝壁画が8日、古墳近くにある修復施設で一般公開された。

 事前に申し込んだ約3100人が「飛鳥美人」と呼ばれる女子群像などを施設の通路からガラス越しに見学。期間は16日まで(13日を除く)で、平日は当日受け付けもある。

 文化庁はカビなどで劣化した壁画を修復するため、平成19年に高松塚古墳の石室を解体。壁画が描かれた壁石ごと施設へ運び、カビを取り除く作業などを進めている。

 一般公開は5回目だが、今回は文化庁の検討会がことし3月にまとめた最終報告書を踏まえ、見学者には劣化原因なども説明する予定。

社説:もんじゅ再開 実用化への道は未知数

日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」が運転を再開した。95年のナトリウム漏れ事故から実に14年5カ月ぶりとなる。

 長期にわたり停止していた機器を動かすだけに、安全性の確保には細心の注意が欠かせない。原子力機構は当然、念入りな点検を実施してきたはずだが、念には念を入れ、慎重に作業してほしい。

 長期停止設備も含め、トラブルはありうる。その際に忘れてはならないのは、情報の透明性だ。

 95年の事故の際、原子力機構の前身である旧動力炉・核燃料開発事業団は、情報隠しを行った。それが組織の信頼性を著しく損ね、施設への不信感にもつながった。再び同じことがあれば、信頼は取り戻せない。

 日本政府は、使用済み核燃料を再処理し、取り出したプルトニウムを再び燃やす「核燃料サイクル」を原子力政策の要としている。高速増殖炉は、この政策を支える車の両輪のひとつだが、運転再開に伴う短期的な安全性以外にも、課題は山積している。

 今回の運転再開は試運転に相当する性能試験で、すぐに発電するわけではない。1年後に予定される発電開始や、3年後の本格運転開始までには、多くのハードルを越えなくてはならない。

 これがうまくいったとしても、高速増殖炉の実用化はまだ遠い。もんじゅは、「原型炉」の段階であり、「実証炉」を経て50年までに商業化するという。しかし、もんじゅの運転が遅れたため、すでに検討が始まっている実証炉にその経験が生かしきれるのか不明な部分がある。どれほどコストがかさむかも未知数だ。

 実用化には経済性も欠かせない。もんじゅの建設・運転費はこれまでに約9000億円、今後の運転に毎年約200億円かかることを思うと、楽観できない。

 高速増殖炉の世界的な位置づけも変化してきた。米国やフランスは、核廃棄物を燃やして減量する手段として、もんじゅの技術に注目する。そうした動向も踏まえ高速炉の将来を考える必要があるだろう。

 核燃料サイクルにはもうひとつの課題がある。高速増殖炉と共に政策の両輪を成す再処理工場でもトラブルが相次ぎ、完成時期がたびたび延期されてきたことだ。特に、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体作りの過程が難航。今も、溶融炉に落下したレンガの回収に手間取り、完成のめどが立たない。

 温暖化対策の影響で、このところ原発には追い風が吹いている。しかし、高速増殖炉は通常の軽水炉とは位置づけが異なる。安全性もコストも、今後の見極めが肝心だ。

ギリシャ:ゼネスト3人死亡 銀行に放火

【アテネ藤原章生】ギリシャ政府が導入を決めた新たな緊縮政策に抗議するゼネストが5日、ギリシャ全土であり、首都アテネの銀行がデモ隊に放火され銀行員3人が死亡し、市民・警官計44人が負傷した。ギリシャでのデモでの死者は91年以来。政府は平静を呼びかけているが、情勢悪化に便乗した過激勢力の破壊行動は続きそうだ。

 現場は市中心部スタディウ通りのマルフィン・エグナティア銀行(3階建て)。警察当局によると、数万人が参加したデモ行進が始まった直後の午後2時半(日本時間午後8時半)ごろ、デモ隊の一部が銀行の入り口を壊し行内に火炎瓶を投げ込んだという。

 ストに参加せず3階で働いていた32歳と36歳の女性、35歳の男性が煙に巻かれて死亡した。女性の一人は妊娠4カ月だったという。他に4人が行内にいたが、窓やベランダから逃げ出し無事だった。

 現場近くに住む観光業のガリスさん(72)によると、この日のデモは過去40年で最も激しいもので、経済省管轄の8階建てビルなど数件の建物と少なくとも5台の車が炎上した。また商店のガラスが割られ略奪もあった。

 通常、警官隊は黒覆面のアナキストら過激派を刺激しないため、ゴム弾の発砲を控える傾向にあるが、この日は各所で激しい衝突があり市民15人と警官29人が負傷した。

 政府の粉飾決算に端を発した財政危機で、ギリシャは3月初めまでに、増税、公務員給与削減など2度の緊縮策を導入したが大きな混乱はなかった。だが財政は好転せず、ギリシャは1100億ユーロ規模の融資をユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)から受けるため、3度目の緊縮策を今月2日に発表した。

 新たな策は3月に2%上げた付加価値税をさらに2%上げ23%にし、年金受給開始年齢を引き上げ、公務員給与を再び削減する厳しいものだ。デモの激化は、政府だけでなく緊縮策を強いるドイツなどに対するギリシャ庶民の不満が煮詰まった結果と言える。