中山美穂は手の演技の天才だ! 『サヨナライツカ』

中山美穂が濃厚なラブシーンを演じ、12年ぶりに映画主演を果たしたことで話題の本作。だが、厳密には西島秀俊扮するビジネスマンが主人公で、結婚を目前に控えた彼が、出張先のタイで謎めいた美女=中山の肉体におぼれてゆく話だ。テーマも“男の選択”。だから女性、特に主婦にはオススメしない。

監督は、『私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン。映画をよく知っている。石田ゆり子の足袋を履いた足で始まるこの映画では、幾度となく手足が強調される(中山は手の演技の天才!)。この映画的な“身体性”は、ロベール・ブレッソン作品にも通じる…と言ったら褒めすぎだが。

そして後半は一転して、25年後の主人公の後悔(?)が描かれるが、前半とは異質の青味がかって現実感を欠いたタイの町並みといい、窓ガラスに反射した西島の顔で始まって終わるセオリー通りの編集といい、25年前の選択を悔やむ気持ちが生んだ、妄想シーンだと解釈した方が自然だろう。

サラリーマンとシネフィル(映画マニア)にこそ見てほしい作品である。★★★★☆(外山真也)

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