百貨店大手 全社が大幅減益 業態改革にらみ生き残り競争

4月15日8時15分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 大手百貨店の2009年2月期連結決算が14日、出そろった。昨秋以降の金融不安に端を発した消費不振は、各百貨店の業績を直撃。3月期決算の三越伊勢丹ホールディングス(HD)の予想も含めると、大手4グループはいずれも大幅な減益となる。百貨店の業態の存在意義自体も問われつつある今、各社の生き残りをかけた競争が始まった。

 14日に決算を発表した大丸と松坂屋を傘下に持つJ.フロントリテイリング(JFR)は、売上高1兆 966億円とかろうじて大台を確保したが、高島屋は連結決算の公表を始めた1990年2月期以降で、初めて1兆円を割り込んだ。昨年12月以降、前年同月比で売上高の2けた減少が続く消費不振の深刻さは、百貨店の経営の根幹を揺るがす。JFRは10年2月期も大幅な減収減益を見込み、売上高1兆円割れ(9900億円)を予想する。

 3月期決算の三越伊勢丹HDも年度当初に比べ、売上高で1200億円の減収を予想、最終利益は 110億と3分の1にまで減少する見込み。統合効果さえ見えない。そごうと西武百貨店を抱えるミレニアムリテイリングは、両百貨店の単純合算で58億円の最終赤字に転落した。

 なおも続く消費不況についてJFRの奥田務社長は、「今年度の下期は、すりガラスを通して霧の中を見ているよう」と、見通しにくさをたとえる。

 高島屋の鈴木弘治社長は現在、7兆円を超える百貨店の年間売り上げが「5、6年で5兆円台になる」と厳しい見解を示している。

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【予報図】

 ■縮小するパイ シェア拡大図る

 日本の人口構成も相まって、百貨店各社は、縮小するパイの奪い合いによるシェア拡大を目指さざるを得ない状況だ。

 JFRの奥田社長は、「百貨店に対しては、消費者の価格に対する不満が一番大きい」と指摘。大丸梅田店(大阪市北区)に出店した紳士服のはるやま商事が、目標の3倍以上の売り上げを計上していることを例に挙げ、百貨店の“専売特許”でもある高価格帯商品に加え、中価格帯や低価格帯の品ぞろえも充実させ、「幅広い顧客層を取り込まなくてはいけない」との考えを示した。さらに店舗面積にも見合った顧客の取り込みなどによるシェア拡大を図り、百貨店業界を生き抜く意向だ。

 高島屋の鈴木社長も「縮小市場で生き残るためにやれることはシェア拡大」と明言する。北海道の老舗百貨店、丸井今井(札幌市中央区)の支援に名乗りを上げたのも、そうしたシェア拡大路線の一環という。

 こうした戦略に加え、百貨店は現状の不況克服に加え、高コスト体質からの脱却など、課題は山積。百貨店が百貨店であり続けるためにも、従来の百貨店の在り方を抜本的に見直す動きが顕在化するとみられる。(兼松康)

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