「鉄道模型は笑顔が燃料」 豊橋の水野さん、子どもたちを楽しませる

12月21日11時24分配信 中日新聞

 「出発進行!」。乗って遊べるパノラマカーの横には、路面電車や電気機関車の模型も並ぶ。日々メンテナンスに励み、日曜祝日にはイベント会場で子どもたちを笑顔満面にさせる。豊橋市馬見塚町に住む水野達生さん(61)、今では「電車のおじさん」として知られるようになった。
 蒲郡市生まれだが、長年、家業の毛織工場がある豊橋市で暮らしてきた。中古車販売や家業手伝い、洗濯店勤務など、さまざまな仕事に就き、昨年3月に行政のコンピューターシステムを手掛ける会社を退職。子どものころからの趣味だった鉄道模型づくりが“本業”となった。
 乗って遊べる鉄道模型「5インチ(12・7センチ)ゲージ」を始めたのは10歳のころ。「自分に子どもはいないが、多くの子どもたちを喜ばせたい」との思いからだった。本物の8・4分の1の縮尺で、動力は自動車用バッテリー。時速10キロでも、時速80キロ以上の感覚が味わえるという。
 レールや足回りは大半が市販の物だが、車体は、すべて手作り。主に木が材料だ。
 「ちょっと持ってみてくださいよ。結構重いでしょ」。確かにずしり。見ると外側はきれいに塗装してあるが、見えない内部は木の板がいくつも重ねられ、苦労の跡がうかがえる。廃材も活用し、窓ガラス部分は透明なフィルムを使う。「設計図などは売っていないので、本物を参考に、自分で設計して材料集めに走り回っています」と話す笑顔は、大変さを感じさせない。
 0系新幹線を皮切りに、これまでに10両を作った。自動車のCDプレーヤーを改造した警笛音付きのパノラマスーパーなど名鉄の車両が人気だが、今一番気にかけているのが、豊橋鉄道に導入されたばかりの低床車両(LRV)。計画段階の予想図を参考に想像して作ったこん身の作だが「本物とちょっと違うので、作り直そうと思っているんです」とこだわりを見せる。
 車両や線路は傷みやすく、管理は大変で、会場まで運ぶのも一苦労。同じ趣味の仲間の中には、外で走らせないで楽しむ人もいるという。だが「私は人に楽しんでもらうことがうれしいんですよ」と、外での運転にこだわる。月に3、4回“出張”することもある。
 最近は豊橋市内の高校生も、同様の模型作りに励んでいる話を聞いた。「若い子と競争し合い、励まし合って楽しい車両を作り続けたいね」。子どもたちの笑顔を思い浮かべ、手を休めない。
 (村瀬力)

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